細見美術館 ‐春画展‐
春画とは?
春画(しゅんが)とは、特に江戸時代に流行した性風俗(特に異性間・同性間の性交場面)を描いた絵画。浮世絵の一種でもあり、笑い絵や枕絵、枕草紙[1]、秘画、ワ印とも呼ばれる。また、それほど露骨な描写でない絵は危絵(あぶなえ)とも呼ばれた。
その描写は必ずしも写実的でなく、性器がデフォルメされ大きく描かれることが多い。
(Wikipediaより引用)
春画という存在をいつ知ったのか、僕は分からない。
蛸と女が交わるということで有名な、葛飾北斎の『喜能会之故真通』(きのえのこまつ)を初めてみたのがいつなのか分からないように、耽美なものというのはむしろ、無意識に通り過ぎてしまうものなのかもしれない。
ただ、大河ドラマ「篤姫」か何かで、主人公が夜伽の場面で初めて読むシーンを見ていて、こういう時に使ったのかと関心したのは覚えている。
その時は春画そのものというより、当時の性事情や威厳ある大名たちがこっそりと春画を使っていたという、歴史的事実について興味がひかれた。
それは、父親のエロ本を見つけてしまった時のような、密やかな笑いだと思う。
今回の春画展に行った理由は、春画には笑いが含まれているという文句を目にしたからだ。昔の笑いはどんな感覚なんだろうか、またどんな所に妖艶な肉体を見出していたのか気になった。
細見美術館は、岡崎公園や平安神宮の近くに位置している美術館だ。
ティーカップや蒔絵などの比較的マイナーな展示をしていて、中規模ながら結構面白い展覧会をしている。
春画展の当日券の存在を知らず、チケット料金1,500円を支払い入ってみた。(泣)
正直な話、僕は個人的に春画そのものについて低俗な絵としか思ってなくて、そこに美しさがあるようには感じていなかった。そして、春画に含まれる笑いというのは、日本人らしい恥じらいが前提としてある、隠された笑いなのであって大々的に展示をして、みんなでその可笑しさをケース越しに見るという行為には、批判的な立場だった。
なので、春画展を実際見てみてその偏見が変わるかどうか試したかったというのもどこかにあった。
結論から言うと、鑑賞した後も春画はやっぱり低俗な絵に過ぎないと思った。
なぜそう思うのかというと、単純に同じく観覧していた客が口にした
「これを笑えないとか、春画をみてないなあいつ」
という言葉を聞いたから以外にない。僕は、美術館などに時おり出現する、芸術が分かってますアピールを周囲に押し付ける教養主義者がとても嫌いなので、
「あ、つまんない」
と思ってしまった。
それに加え、館内のスタッフが客を小馬鹿にするような笑みをしていたり、鑑賞を楽しむことのできない環境にいて、とても疲れた。
気に入った作品があったかといえば、あったんだと思う。
それはやっぱり葛飾北斎の異様なまでにセリフが書き込まれたものであったり、
なにげない丸みを帯びた男女の交わりを描いた肉筆画だったかもしれない。
その時は、確かに僕は美術を鑑賞する楽しみに浸っていた。
僕は美術館を出て、日本のエロスはやっぱり難しいと思った。日本の耽美というのは、着物から隠されて初めて現れる悩ましさであって、西欧のように体格の良さを讃えるものとは異にしているんだなと改めて覚えて、奥深い江戸文化を少しだけ覗いて帰った。